新型コロナウイルスの蔓延による旅行自粛の反動なのか、いま国内海外を含めて、旅行に出かける人の数が大幅に増加しています。
特に、海外の人にとって、日本は憧れの観光地。日本を一度は訪れてみたいを考えている外国人は、意外と多いものです。
そうした流れを受けて、日本国内では民泊という形で、観光客に宿泊場所を提供しようと考える人も増えています。また、日本人と直接触れ合ってみたいと考える外国人にとっても、民泊は魅力的な宿泊施設なのです。
この記事では、日本で民泊を事業として始めるにはどのような手続きが必要なのか検証します。
「民泊」とはなにか
最初の疑問として、「民泊とは何」と思う人も多いのではないでしょうか。今でこそ、「民泊」という言葉はメジャーになっていますが、 民泊の定義なんてよく考えたことがある人は多くはないでしょう。そもそも、「民泊」に定義なんてあるのでしょうか。
「民泊」にも、定義はあります。それは、民泊とは「宿泊用に提供された個人宅の一部や空き別荘、マンションの空室などに宿泊すること」とです。この定義は、後で説明する「民泊新法」という法律で取り決められています。
民泊の始め方【その1】民泊の種類を決めて、必要書類を届け出る
民泊を事業として始めようと思ったら、民泊の種類を決めて、それに応じた書類を指定された機関に届け出る必要があります。
実は 民泊には3種類あります。まず「旅館業法民泊」と呼ばれます。続いて「特別民泊」と呼ばれるもの、そして最も新しいものが「新法民泊」という形態です。それぞれ民泊のタイプが異なりますし、また届ける書類の提出先も異なりますので、注意が必要です。
旅館業法民泊
「 旅館業法民泊 」とは、既存のホテルや旅館と同じタイプの宿泊施設として経営する形態です。宿泊施設としての年間の稼働日数の制限がなく、365日毎日営業することができます。
書類の提出先は市役所の中にある「建築指導課」「開発審査課」になり、主に次のような書類を提出することになるでしょう。
- 登記事項証明書
- 状況見取り図
- 配置図・平面図
- 構造設備の仕様図
- 仕様承諾書
- 水質検査成績書
- 土地・建物登記簿謄本
- 検査済証
本格的に宿泊業を経営してみたい方は、お住まいの市役所の該当の部署に連絡を取り、必要事項を問い合わせることをおすすめします。
また、こうした本格的な宿泊施設は、印象区物を提供するレストランも併設されていることが多いもの。そのため、各地域の保健所へも届け出をする必要があります。
特別民泊
「特別民泊」とは別名「特区民泊」とも呼ばれており、旅館業法の特別除外を受ける形で指定された営業形態です。各都道府県の許可を受けることで、一般住宅を使った宿泊サービスを提供することができます。
日本でこの「特別民泊」の形態をとりながら宿泊業を営むことができるのは、一部の限られた地域のみとなっています。例を挙げますと、千葉県千葉市や東京都大田区、大阪市や新潟市、福岡県北九州市となっています。とは言え、この地域に住む人が自由に民泊を営むことが許されている、ということはありません。
各自治体が、宿泊施設を厳しく検査し、「認定」を受けたところだけが、民泊を事業化することができます。また、こちらの「特別民泊」で受け入れることができる宿泊者は、2泊3日以上の宿泊をする人のみとなっています。
新法民泊
最も新しい法律がこちらの「新法民泊」です。基本的に民泊をしたいと考えている街の保健所に必要書類を提出すると、民泊として営業することができます。ただし、民泊として稼働できるのは、年間180日以下の稼働日であることが、条件の一つとなっています。また、手続きの第1段階として、近くの消防署から「消防法令適合通知書」という書類を入手する必要があるので、注意しましょう。
民泊の管理方法とは?
「新法民泊」における、民泊の条件の一つとして、基本的に家主(民泊の運営者)が同じ建物内に一緒に暮らし、家主の住宅の延長という形で民泊を管理することが必要になります。
もしも、家主がいない形での民泊を運営する場合は、民泊の代行運営会社のような代行業者が管理・運営していることが必要になります。
民泊の始め方【その2】必要があればリフォームする
民泊として営業することを考えると、建物によっては内部をリフォームが必要な場合もあります。特にバスルームやトイレ・キッチンなどの水回りの設備が古かったり汚かったりすると、宿泊者の満足度は一気に落ちるもの。特に水回りはきちんとリフォームした方が良いでしょう。
また、民泊として営業する場合は、防災や減災の観点から、消防法を満たす施設を設置することが義務付けられています。こうした施設を設置するために、内部を一部リフオームすることが必要になるかもしれません。
こうしたリフォームのコストは意外と高額になることが多いもの。資金的にも余裕を持って、民泊の運営に踏み切ることがおすすめです。
民泊の始め方【その3】民泊サイトに登録する
リフォームが終わり部屋や施設がきれいになったら、次は様々な民泊サイトに登録することになります。 こうした民泊サイトに情報を掲載するときに、重要な役割を果たすのが写真です。写真はできるだけ多めにして、ベットルームはもちろんバスルームやキッチンの写真なども掲載するようにしましょう。
また、掲載する情報の中で重要になるのが、最寄駅からの民泊の建物に到着するまでの道順です。「どこの駅のどの出口から出るのか」、「バスを使う必要があるなら何番のバスに乗り、なんという名前の停留所で下車するのか」そして「バスを降りてから目的地まで行く道のりはどうなっているのか」という情報を詳しく載せるようにしましょう。
登録をおすすめする民泊サイトの代表例として、次のようなものがあります。
Airbnb(エアビーアンドビー)
民泊のサイトの中で最も有名なサイトがこちらのAirbnbです。世界最大級の民泊サイトで日本語サイトはもちろん、外国語サイトもあるので海外からのお客様も見込むことができます。
ホスト側の手数料が3%である一方で、こちらのサイトに掲載しているホストには「ホスト保障」という保険が適用され、万が一の時には最高で1億円まで保険金が保障されているのは、嬉しいのではないでしょうか。
ホームアウェイ
大手オンライン旅行予約サイト「エクスペディアグループ」の民泊さいとがこちらのホームアウェイです。200万件以上の施設が登録されており、日本語ページも開設されています。
エクスペディアグループの一部なので、航空券を予約した人がこのサイトを見に来ることも多く、多くの人の目に留まりやすいサイトです。海外のお客様を迎えたいホストの方におすすめです。ちなみにこちらのサイトもホスト側の手数料は3%となっています。
エアトリ民泊
株式会社エボラブルアジアが運営している総合旅行サービスプラットフォームAirTripの民泊部門のサイトがこちらです。全国の簡易宿所及び特区民泊のような合法物件のみを掲載しているため、民泊が初めてという方でも安心して泊まることができる施設ばかりです。また、こちらのサイトを通して民泊を予約すると、同時に交通機関の予約も完了できるようになっています。
現在掲載されている民泊施設の数は決して多くはありませんが、民泊経営の第1段階として、日本人の客様を招きたいと考えている施設におすすめです。
民泊の始め方【その4】お客様が宿泊する
民泊サイトから予約が入ったら、できるだけ早めに予約に返事を送りましょう。また、宿泊予定の方の連絡先(携帯電話番号やメールアドレス)なども、忘れずに聞いておくようにしましょう。同時に、施設側の連絡先もお客様にお伝えするのを忘れないようにしましょう。
お客様が無事に施設に到着したら、笑顔でお出迎えして差し上げましょう。言葉の問題があっても、翻訳ソフトをフル活用すれば大丈夫。お客様が笑顔でチェックインして、笑顔でチェックアウトするまでが、施設側のお仕事となります。
民泊の始め方【その5】宿泊した人からのフィードバックを聞く
実際に宿泊した人には、チェックアウト後もしばらくの間、連絡を保つことがおすすめです。というのも、お客様の感想には、施設側の気が付けない、様々な改善点が見つかることが多いからです。
よい民泊の定義はお客様の数だけあったとしても、自分が好きな施設はほかの人にも紹介したくなるもの。施設側も、お客様の要望に対応するために、日々改善しておくことが必要なのです。
【番外編】民泊経営が失敗するのはこんな時
日本への外国人観光客が急増している昨今ですが、その一方で民泊経営を失敗するケースも意外と多いものです。
まず、民泊経営をしたいと思っていた建物自体が消防法の影響などで、民泊経営に適していないと判断され、市や県から民泊の営業許可が下りないということもあります。また、各都市にある「住居専用地域」には、民泊の施設を開業することができません。民泊経営に踏み切る前に、その土地でそしてその建物で民泊が法律的に許されているのかどうか、ということを確認しましょう。
また、無事に民拍の営業ができるようになっても、施設側としては、利益が出なくては続けていくことはできません。もしも、立地が悪ければ、他にアピールできる点を見つけたり(静かな環境など)、送迎サービスを手配するなどの工夫が必要です。また、「新法民泊」では、民泊の営業は最大でも年間180日まできめられています。つまり、半年間は民泊を運営できないことになりますので、その間の対応も考えておく必要があります。
民泊は手続きを踏めば、誰でも始めることができる
民泊経営は手続きが複雑で時間がかかります。しかし、行政書士や弁護士などの法律の専門家の手を借りながら、確実に順番を踏むことさえできれば、民泊は誰でも始めることができるのも事実です。
民泊を経営するなら、時間的にも資金的にも余裕を持ったうえで、開業した方が良いでしょう。
参考:旅館業と建築基準法について解説!民泊を始めるなら知っておくべきポイントとは | 民泊・Airbnb運営管理代行の株式会社プレイズ