グランピングは手軽なアウトドア体験を提供する新しい旅行スタイルとして人気が高まっています。そのため、全国で需要が広がり、新たな事業展開を検討する事業者も増えています。
ただし、グランピング施設をオープンするには、行政の手続きが必要です。
今回は、運営を始める前に必要な許可や届出についてご紹介します。
グランピング施設運営は「旅館業法の許可」が必要
グランピング施設運営は、旅館業法の対象となります。そのため、事業を開始する際は「旅館業法の許可」を取得しなければなりません。
こちらでは、グランピング施設運営に必要となる「旅館業法」の概要、違反した場合の罰則についてご紹介します。
旅館業法とは
旅館業法とは、宿泊サービス業に関する規定を定めた法律です。1948年に制定され、旅館業の正しい運営と施設の安全・衛生水準の維持を目的としています。
現在、旅館業法は「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3つに大別されます。宿泊サービス業を展開する場合は、いずれかの許可を取得することが必要です。
旅館業法に違反した場合
旅館業法には、違反した場合の罰則が設けられています。
例えば、旅館業を許可なく運営する場合は、懲役6ヶ月以下または100万円以下の罰金、あるいはこれらを併科する可能性があります。その他の旅館業法違反には、50万円以下の罰金が科せられます。さらに、罰金刑が執行された後、3年間は旅館業法に基づく許可申請が禁じられています。
これらの罰則は、新たにグランピング事業を開始する場合に限らず、全ての旅館業者が知っておくべき事項です。
グランピング施設は「旅館業簡易宿所営業の許可」が必要
旅館業法には、いくつか種類があります。
グランピング施設の場合は、ほとんどが「簡易宿所営業」に該当します。
こちらでは、グランピング施設運営に必要となる「旅館業簡易宿所営業の許可」の条件や、許可申請の流れについてご紹介します。
簡易宿所営業の許可に必要な条件
簡易宿所営業の許可を申請するにあたって、必要な条件は以下の通りです。
- 客室の延床面積が利用者1人あたり3.3㎡以上であること
- 宿泊者の需要を満たす適当な規模の入浴設備があること
- 適切な換気や照明、防湿および排水の設備があること
- 都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合していること
また、客室数やフロントの設置に関しては、旅館業法で明確な規定はありません。
ただし、各都道府県や市町村においてフロントの設置に関する条例がある場合がありますので、確認することが必要です。
簡易宿所営業の許可申請の流れ
簡易宿所営業の許可を取得し、実際に営業開始するまでには以下ような手順が必要です。
- 事前相談
- 許可申請
- 施設検査
- 許可
- 営業開始
まずは、事前相談を行い、担当窓口に申請手続きを確認しましょう。許可申請を行う場合は、許可申請書や施設の図面、その他必要書類、手数料を準備します。
ただし、施設が構造設備基準を満たしていない場合や旅館業法に違反している場合などは、申請が通りません。
許可申請が通ると、保健所職員らによる立入検査が行われ、施設検査によって適合されていると確認が取れると、許可が下ります。営業開始までの期間は数週間程度であることが一般的です。
グランピング施設運営に関連するその他の法律
グランピング施設運営には、旅館業法の他にも取得しておくべき法律があります。
こちらでは、グランピング施設運営に関連する旅館業法以外の法律についてご紹介します。
都市計画法
都市計画法は、都市の健全な発展などを目的とした法律です。
グランピング施設を運営するためには、運営が許可されている地域であることが必要不可欠です。また、周辺の景観を守るために、建物を建てることが禁止されているエリアが指定されています。
どの地域が概要するかを確認しておくことが重要です。
建築基準法
建築物の敷地や設備、構造などに関する最低基準を定めた法律です。
建築基準法に基づき、建物の新築や改修などを行う際は、自治体によって建築確認申請が必要となるケースとそうでないケースに違いがあります。
消防法
火災を防止し、国民の命や身体、財産を守り被害を軽減するための法律です。
簡易宿所営業を行う場合は、防火管理者を設置し、消防計画の作成が必要です。また、延床面積が150㎡以上の場合は、消火器や自動火災報知器の設置も行わなければなりません。
公衆浴場法・温泉法
公衆浴場の経営に関する規定を定めた法律であり、お風呂を設置する場合は、公衆浴場法の対象となる可能性があります。
また、施設内に温泉風呂を設置する場合は、温泉法に基づき許可申請が必要です。
食品衛生法
グランピングにおいては、BBQを行う施設が多く、食材の販売も行われることがあります。しかし、食品による健康被害を防止するために、食品衛生法に基づく販売許可が必要となります。
許可を得ない場合、違法行為となるため、営業を行う前に確認しておきましょう。
酒税法
酒税の賦課徴収や酒類の製造・販売業に関する規定を定めた法律です。
グランピング施設内で酒類の販売を行う場合は、酒類小売業免許が必要となります。
農地法
農地および採草放牧地の取り扱いについて定めた法律です。
グランピング施設として開発しようとする土地が農地である場合は、農地転用が必要となります。また、農業振興地域である場合は、農業用地転用承認を得ることが必要です。
安全なグランピングを経営するために必要な手順を踏むことが大事!
グランピング施設を運営するには、その地域や設備によって必要な許可があります。
例えば、旅館業法や都市計画法、建築基準法などが該当します。これらの法律に違反すると、懲役や罰金の対象になります。
グランピング事業を始める前に、必要な許可が何かを確認し、適切な準備を整えましょう。